インタビュー

理事インタビュー ~男女共同参画を語る~

【とき】平成28年5月19日(木)

【場所】荒牧キャンパス・まゆだま広場

【インタビュー】本多 悦子 理事(学長特命担当)

【インタビュアー】工藤 貴子  男女共同参画推進室長
長安 めぐみ 男女共同参画推進室副室長

県庁で3回男女共同参画にかかわる

工藤:理事には4月に新しく男女共同参画推進委員会の委員長に就任されてから色々と教えていただいています。県庁にお勤めされた理事のご経験と特に男女共同参画に関係することをお話いただけますか?

本多:県庁に定年まで勤めたということで、私は15箇所くらい所属を経験しているかな。その中で3回経験したのが男女共同参画関係です。

工藤:それは女性だからですか?

本多:そうですね。最初はまだ男女共同参画ではなく「女性政策」でしたから・・・。「女性政策室」に在籍していた平成11年に男女共同参画社会基本法が成立して「男女共同参画」という言葉が使われるように。この時は、担当職員ということで事業広報誌やデータブック的な白書を作ったり、シンポジウムを開催したり、県男女共同参画計画の策定も担当しましたね。その後、平成13年にDV防止法が出来て、財団法人女性会館の中に暴力相談のための「女性相談支援室」が新設され、県から出向という形で行きました。室長が弁護士の富岡恵美子さんで、室長の熱意のもとで相談者のため、支援の選択肢を増やしていく充実した3年間でした。3回目は、平成21年県庁のすぐ西側に「男女共同参画センター」が出来るということで、そこの初代の所長になりました。1回目は普通の異動で、2回目はたまたま外部への出向で男女共同参画を経験した人が良いという話から。参画センターはそれこそ年齢的に経験した人がいなくて・・・という感じですね。

長安:男女共同参画の基本法とDV防止法と参画センターと全部、初めてっていうことですか?

本多:すべて初めていう感じで関わってきたなということですね。

工藤:女性の職員さんは少なかったのでしょうか?

本多:就職したころはまだ均等法が出来る前ですから、採用自体が「男性50名、女性若干名」というときで。尚かつ、配偶者が管理職になると、暗黙の了解で、女性の方が辞めるっていう。

工藤:辞めるのですか?!異動でなくて?

長安:パートナーが管理職になったら、もう退職しますという慣行的なものですよね。

本多:そうです。ですから、私の先輩や同世代は、そもそも管理職年齢の女性が少なかったですね。後輩は優秀な女性がたくさんいますので、これからの活躍が楽しみです。
管理職の経験としては、1つの所属を任せられる所属長になったのは参画センターが最初で2年間。その後は子育て支援課長、保育や児童虐待を所管して、すごいやりがいがあったのですけど、そこは1年で。次に異動した県民生活課長も1年で。その後は生活文化スポーツ部長を2年務めて定年退職。所属長になってからは1~2年でドンドンドンと代わるってそんな経歴ですね。

工藤:男性の部下で色々と気を遣われたことはありますか?

本多:う~ん、それはあまりないですね。やはり組織で仕事をするので職が付けば、とても尊重してもらっちゃう感じというと可笑しいのですけど(笑)。逆に居心地が悪いなと思ったのは市町村長懇談会とか、外部の会議に出ると、50~60名いる中で女性1人。懇親会で仕事以外の話題は何をと・・・?もっと女性が多いといいなと感じましたね。
それから、部長になって色々な式典に出たりするようなところも、通知文に礼服着用とかってあって。男性はまぁ普通にスーツでいいでしょうけど、女性はどの程度の服装をすれば(笑)。

長安:何を着ればいいのかという。

本多:そうそう、何を着ればいいのか悩みました(笑)。でも女性部長は私で3人目だったから先輩の部長さんに電話して「叙勲や総合表彰はどの程度ですか?」「結婚式に行くくらいの服かな」とか教えていただいて(笑)。それと、防災訓練とかね、防災服のサイズ合わせに行ったら、山のようにあるのだけど、殆どみんな男性サイズで(笑)。そこから自分に合うサイズを探すのが大変だったことも(笑)。

工藤:そういうちょっとしたことが・・・。
 
本多:そういうちょっとしたことの方にとまどいを感じました。ただ、日々の仕事では男性だから、女性だからとは意識しなかったですね。逆に、今度群馬大学っていう初めての所に来ると、男性の方たち皆さん、もちろん女性も知らないのですけど、初対面の方ばかりで、ちょっとどんな方なのかなと緊張します。

工藤:でも、理事はとても周りの人を和やかにされる魅力をお持ちなのですよね。推進委員会で初めて司会をなさったじゃないですか、男性がほとんどの中で。柔らかい感じで、ああやっぱり違うねと(笑)。だから、きっと味方も多く作られる方だろうと思いました。

勇気をもって形も意識も変えていく

工藤:推進委員長のお立場になられたので、お伺いしなければならないのですが、これからの大学の教職員とか学生を含めた男女共同参画の重要性とか意義とかをどういう風に考えられて、どうしていったら良いとお考えでしょうか。

本多:人口の半分は女性ですし、普通に考えていくと大学のなかも色んなところで5割くらいになっていくのが自然の姿かなというふうに思うのですが。日本の場合は「女性は家庭で男性は仕事」っていう戦後のスキームが、まだまだ根強く残っています。

工藤:意識啓発って難しいですよね。

本多:自分の中にも「女だから」っていう意識が残っていたりして、職場の中ではポジティブ・アクションを意識的にやっていかないと変わらないだろうなと。変わるにしてもものすごく時間がかかって、その間に世界の中では置いて行かれるなと思います。

工藤:まず形から入るってことも大事ですね。意見は色々あるわけですが、とりあえず数を増やすというところから。

本多:昔聞いたのですが『形は心を支配する』。本当はその精神ですよね。でも形が整うと、心も変わって整っていく。だから数値目標を持つことも大切です。
それから、意識を変えるにはシステムを変えないと。新しいことに取り組んでいくって結構「勇気」が必要です。男性自体が勇気を持って変えてくれないと、その次の女性が続かないですよね。やっぱり「前のとおり」にやっているのは居心地が良いですものね(笑)。私自身、県庁にいたときは、大澤知事から「前例踏襲で安心していてはダメ。前例がないという説明は認めない」と言われていました。

長安:群馬県知事の「前例がないは認めない」の精神はすばらしい。勇気を持ってやっていかなればならないということですね。「前例」を頼りにするのではなくて。

工藤:とにかく現存のシステムを変えて、新しいことに挑戦していかないといけないということです。反発もありますよね。理事も根気強く1人1人説得に回ったって仰っていましたよね。

本多:それは、男女共同参画基本法が出来て、最初の計画づくりの時ですね。係長でしたが、そのときにワーキンググループを分野ごとに作ったのですけれども。

工藤:どんな分野を?

本多:あのとき何分野あったかな。例えば、女性の参画?それこそ方針決定のところに女性を増やすとか。雇用分野、教育の分野、女性の健康分野とか、6~7ぐらいの分野ごとにワーキングを立ち上げました。関係所属の係長クラスさんくらいの方が実働になるっていうので係長を指定したら、全員男性になったところもあって、別に女性は係長でなくてもいいから入ってもらったりして。ワーキングでも割と自由に議論は出来たのですけれども、1対1で話していかないと、なかなか理解してもらえない感じでしたので、ワーキングの人のところを1人1人回って。そうすると結構的外れじゃないのだけれども、「そんなこと言ったって家は母ちゃんがうんと強いしさぁ」とか(笑)。「家の中ではエバっているのだからいいじゃないか」みたいな(笑)。そんなワーキングの人もいたりとかね(笑)。

長安:でも1人1人知り合っていくこと大事ですね、分かっていただくことが。

工藤:粘り強く。ですね、急には無理なので。

本多:お二人のいうとおりです。顔が見えて本音がぶつけられる関係から、互いの理解も進むということを実感しましたね。

しなやかなニットワークで繋がりあう

工藤:最後になりますが、今後の男女共同参画、ダイバーシティに関してビジョンをお聞かせください。

本多:いままで「まゆだまプラン」で3年間取り組んできた歩みを止めることなくやっていくことが必要だと思います。

工藤:パタっと終わってはダメだと。
本多:そのとおり。外から来て見たときに、せっかく数値目標は出来ているのに、現状がどうなっているかとか、あんまり明らかになっていなくて。FDセミナーで広島大学の相田先生も仰っていましたが、広島大学のホームページに掲載されているような詳細のデータ、根拠になるもの、そういうものを共通認識として、皆で把握出来たらいいなと思います。

長安:エビデンスのあるって、仰ってましたよね。

本多:そうですね。もう1つはネットワークというか他との「連携」に力を注げたらいいなと。

長安:繋がっていくことがやっぱり大事ですよね。

本多:よく女性団体の方とも『ネットワーク』でなく『ニットワーク』でもいいよねって。

工藤:えっ、何ですか?

本多:『ニット』=『編む』ですよね。

工藤・長安:あぁ~!

本多:必要なときには編んで、繋がるじゃないですか、作品にもなるけれど。でも、ずっと強固にしていくのはそれぞれ環境も変わって大変じゃないですか。だから不要になれば解いちゃってもいいし、解いてまた形を変えちゃう。

長安:しなやかな「ニットワーク」ですね。

工藤:わぁ~これは凄くいい考え方ですね。臨機応変にというか柔軟にというか。

長安:色々な人と繋がっていかないとダメですね。男女共同参画を自分のことだと考えた時、理事が一番大事にされていることは何ですか?

本多:私は割りと自然体というか。よく女性政策とか男女共同参画とかしていると、「何を頑張っていますか?」とかって言われるのですが。自然体で繋がりを大切にやってきました。もう一つ女性政策に係ったとき、一番最初に疑問に思ったのが「ジェンダーって何だろう?」って。その時、個性や多様性の視点から選択していくのだと学びました。性別で線が引かれるっていうようなイメージがあったけれど、男性だから女性だからって1本の線引きだけでは終わらない。場面によって違いますよね。分かりやすくスポーツだと女子マラソンがオリンピックに採用されるとき、物凄い反対が出て。女性をそんな過酷な状況に置いてはいけないとかって。高橋尚子さんや野口みずきさんが金メダル取っている今では考えられないですよね。どこで分けるかっていうのは場面と時代によってすごく変わると思うのですよ。

長安:変わっていくのですね。

本多:ジェンダーっていうのは場面と時代によって変わってくるのだけれども、今、本当にそれぞれの人が暮らしやすい線引きになっているかっていうのは、いつも考えていかないといけないと思いますね。

長安:問い直していく。

本多:性同一性障害だとか。性別ってすごい色々な区切りが出来ますよね。ジェンダーはグラデーションだと思います。

工藤:生物だから色々ありなのですね。はっきり決められない個性があるので。

長安・工藤:今日はありがとうございました。

本多:ありがとうございました。